固体NMRを利用した固体酸触媒の構造解析

層状ホスホン酸ジルコニウムの構造解析

 

 層状リン酸ジルコニウム α-Zr(O3POH)2nH2O (以降α-ZrP)Zr原子平面が層を形成し、その上下にPO4四面体が配位した構造をしている(Fig.1)。全体としては[Zr(PO4)2n]2-のようなポリマクロアニオンを形成しており、O-イオンがプロトンで中和されてPOH基となる。このプロトンはイオン交換点や酸性点として機能するため、当研究室では燃料電池のプロトン伝導体や固体酸触媒としての応用を検討している。このリン酸ジルコニウムはリン酸(O3POH)の代わりにホスホン酸(O3PR R=官能基)を用いることで、ZrP層間に様々な官能基を導入することができる(Fig. 2)という特徴をもつ。そのため導入するR=官能基の種類によって層間距離を制御したり、酸性や疎水性などの機能を付与することが可能である。

 

 

一例として@α-ZrP、層間に疎水性を付与するためにR=-C6H13を導入したAZrP(-C6H13)および触媒活性点やプロトン伝導性を向上するためにスルホン酸基をもつR=-CH2SO3Hを導入したBZrP(-CH2SO3H)、さらに疎水性とスルホン酸基の両者を有する化合物として2種類のホスホン酸を用いてCZrP(-C6H13 + -CH2SO3H)を合成し、これらの化合物について固体MASNMRによって構造解析を行った。Fig. 3XRDパターンを示す。層間にR=-C6H13を導入したAZrP(-C6H13)では@α-ZrPと比べて、導入したアルキル鎖によって層間が0.76nmから1.89nmに広がっていることがわかる。さらに疎水性とスルホン酸両方を有するCZrP(-C6H13 + -CH2SO3H)では導入したR=-C6H13のアルキル鎖によって層間が保持されていることがわかる。この層間が広いことにより、層間内のプロトンが触媒活性やプロトン伝導に寄与しやすくなることが期待できる。

 

 固体NMRを利用することで、官能基が構造内に本当に導入されているのかを確認することができる。まず、@α-ZrPの構造について考える。Fig.1に示したα-ZrPの構造では、どのP原子も4つの手のうち、3つの手はO原子を介してZr原子と(-O-Zr)、残りのひとつの手は中和プロトンが配位するO原子とつながっており(-OH+)Pの周囲の環境は一種類であることがわかる。合成した@α-ZrP31P-MASNMRスペクトル(Fig. 4)では-19ppm付近に一本のシャープなピークが見られており、このことからこの@α-ZrP P原子の周囲の環境が一種類の均一な環境であることがわかる。

 

 

次に、AZrP(-C6H13)およびBZrP(-CH2SO3H)を導入したCZrP(-C6H13 + -CH2SO3H) 31P-MASNMRスペクトルをFig.5に示す。アルキル基を導入したAZrP(-C6H13)では、-5ppm付近に、スルホン酸を導入したBZrP(-CH2SO3H)では-10ppm付近に一本のシャープなピークが見られた。このことからそれぞれの単独体で一種類のP-R結合しか存在しておらず、Pの環境が均一であることが分かる。さらに疎水性とスルホン酸の両方を有する化合物のCZrP(-C6H13 + -CH2SO3H)では-5ppm付近と-10ppm付近の二つのピークが見られる。このことから、疎水性の-C6H13とスルホン酸基をもつ-CH2SO3Hの両方が構造内に導入されていることが確認できる。