装置名 電子スピン共鳴装置
ESR (Electron Spin Resonance)
EPR (Electron Paramagnetic Resonance)
機種名
日本電子製 JEOL JES-FA300 (本体)
日本電子製 JEOL ES-PRIT 300 (データ解析システム)
原理  通常電子の磁気モーメントはランダムに配向しています。ところが磁場を与えると、磁気モーメントは磁場方向に対して平行か反平行かの2つのエネルギー状態しかとれなくなります。このように2つのエネルギー状態に分裂することを、ゼーマン分裂といいます。ここで、外部から周波数 n の電磁波を与えると、電磁波のエネルギーが2つのエネルギー準位の差に相当するところで電磁波の吸収が起こります。これを電子スピン共鳴といいます。

 この時の共鳴条件は次の式で与えられます。

 hn = gbH0

  h : プランク定数, n : 周波数, g : g値, b : ボーア磁子, H0 : 磁場強度

 g値はフリーラジカルの場合2.0023となり、外部の電子的環境によりその物質特有の値を持つようになります。従って、g値を測定することにより不対電子の持つ電子的環境を知ることができるようになります。
特徴  本測定装置は本体(Xバンド)とデータ解析システムからなり、種々の測定およびシミュレーションなどの解析も行えます。本装置の特徴は、本体の高分解能およびすぐれた解析システムもさることながら。次に上げる豊富な付属測定システムにあります。
  • 電気化学測定システム:
     電気化学的酸化還元により発生させた不安定化学種のin situ のESRスペクトル測定が行えます。電解ESRセルも自作のものを含め種々のものを備えています。
  • 瞬間マルチ測光システム:
     電気化学的酸化還元により発生させた不安定化学種のin situ の可視・紫外吸収スペクトルおよびESRスペクトル同時測定が行えます。
  • 紫外線照射装置:
    紫外線照射(水銀灯およびキセノンランプ)により発生するラジカル種のESRスペクトル測定が行えます。
  • 温度可変測定装置:
     液体窒素温度可変装置により、-170℃から200℃までの温度範囲でスペクトル測定が行えます。また、液体窒素デュワーを用いて液体窒素温度での測定も可能です。
用途  種々の金属錯体のスペクトル測定がなされています。特にトリス(b-ジケトナト)ル テニウム(III)錯体のg値の置換基効果、幾何異性体のスペクトルの違いなどが明らかになっています。また、ルテニウムポルフィリン錯体やb-ジケトン錯体などの電気化学的酸化還元による、酸化還元サイトの決定などがなされています。

 最近の本装置を用いた研究結果が発表されている文献例。
  1. S. Samanta, D. Ghosh, S. Mukhopadhyay, A.Endo, T. J. R. Weakley and M. Chaudhury, Inorg. Chem., 42, 1508-1517 (2003).
  2. D. Ghosh, S. Mukhopadhyay, S. Samanta, Ki-Young Choi, A. Endo, and M. Chaudhury, Inorg. Chem., 42, 7189-7199 (2003).
運用
  • 測定は講習を受けて認定された者による自己操作によります。測定を行うときは日時を機器室ホームページから予約しなければなりません.
  • 現在は主に金属錯体の液体窒素温度における測定、金属錯体の酸化還元生成物の測定に用いられています。